合宿形式の量子情報についての入門的講義

講義内容と時間割

講義内容

講義タイトル:量子情報理論入門(講師:木村元)

講義内容: 量子情報科学の理論入門として,量子論の知識を仮定せずに初歩から以下の項目について説明する(注1).理論の背景や意義を説明したのち,量子情報処理の基礎概念である量子状態,物理量,量子測定,時間発展,合成系を,有限次元量子力学系の場合に限って解説する.そして,量子情報科学の典型的な応用として,量子テレポーテーション,量子計算の概略(注2)について説明する.また,量子力学基礎論のテーマとして,EPRパラドックス,ベルの不等式や Kochen-Specker の定理について触れる予定である.

(注1) ただし,線形代数(内積空間)の基礎や初等確率論の知識を前提とします.たとえば,行列とその固有値,固有ベクトル,エルミート行列,ユニタリー行列などの定義やエルミート行列やユニタリー行列の対角化(または固有値分解)などの基本定理を復習しておくことが望まれます(また行列表現だけでなく,線形写像の抽象的扱いに慣れていると理解が深まります).

(注2) 本講義では,量子計算のスピードアップの概略を紹介しますが,本勉強会を通じて量子計算の講義は行いません.

講義タイトル:量子系での不確定性と量子暗号(講師:林正人)

講義内容: 量子系の特徴は,非可換な物理量が存在し,それらを同時に測定できない点にある.また,量子系では測定を行うと状態が破壊されることが知られている.これらの点について以下の順に沿って解説する.さらに,これらの性質の応用として,量子暗号について触れる.

講義タイトル:量子エンタングルメント理論(講師:石坂智)

講義内容:量子力学的にエンタングルした(もつれた)2つの量子系は長距離非局所相関などの際立った特徴を示す.従来,量子エンタングルメントは基礎科学的な問題として議論されてきたが,近年の量子情報理論の発展と共に,量子エンタングルメントの理論も急速に進展した.例えば,局所操作と古典通信 (LOCC) の考え方の導入による量子エンタングルメントの定量化などである.この講義では,量子エンタングルメント理論における以下のトピックスを解説する.

講義タイトル:量子誤り訂正と量子秘密分散法(講師:小川朋宏)

講義内容: 量子計算の過程でノイズから量子状態を保護する技術として,量子誤り訂正符号が提案されている.本講義では,最初に簡単な量子誤り訂正符号の具体例を解説する.次に,量子力学的なノイズを記述する量子通信路と,量子系における情報量概念(Holevo相互情報量など)を説明し,これらを用いて,量子誤り訂正が可能な条件を解説する.さらに,時間的な余裕があれば,量子状態を多数の参加者で分散共有する手段である量子秘密分散法について解説する.

予備知識について

大学初年度程度の線形代数・微積分の知識のみを前提として講義を行います.したがって,学部の専門課程でも取り扱わない専門的なテーマを取り扱いますが,学部学生でも受講可能です.学部学生で受講を希望される方は,大学初年度程度の線形代数・微積分の復習を十分に行った上で受講に臨んで下さい.

講義時間割(1コマ=1時間)

午前 午後
1日目(2/26) 2コマ 3コマ 総合討論
2日目(2/27) 2コマ 自由討論 総合討論
3日目(2/28) 2コマ 3コマ 総合討論

各コマの時間は以下の通りです.

トップページへ戻る